2020年9月より呼吸器外科・消化器外科・泌尿器科で手術支援ロボット、「ダビンチ」を用いた手術を精力的に行ってきました。このロボットにより、3Dモニターから映し出される高精細な画像と精度の高い動きをするアームにより、精度の高い手術が可能です。
がんの手術においてはがんを取り残すことなく切除することが肝要である一方、術後の機能温存のために必要な神経は損傷させない工夫が必要です。この相反する命題を高度にクリアーすることができるのがロボットの最大の利点であるといえます。
2021年11月にはロボット手術が100例を達成しました。
当院では7名のロボット手術有資格者が在籍し日々研鑽を積んでいます。またロボット手術指導医資格であるプロクター医師も2名在籍し、続々とそれに続く向上心豊かな医師がおります。
今後とも地域の皆様に貢献できるよう、職員一同頑張ってまいります。
当院は2020年6月に手術用ロボットの最新鋭機であるda Vinci Xiを導入いたしました。本邦における呼吸器外科領域でのロボット手術は2018年4月より肺がんに対する手術, 胸腺腫などの縦隔腫瘍に対する手術にも保険適用が拡大されております。私は既に2012年にスイスのチューリッヒ大学胸部外科への留学時代に縦隔腫瘍に対するロボット手術の経験があるのですが, da Vinci Xiでは高画質で拡大した視野を3次元で構成して手術を行うため, より正確・安全・繊細・複雑な手術手技が可能です。当科においては従来の”開胸手術”, “胸腔鏡補助下の小開胸手術”, “完全胸腔鏡下手術” に新たに”ロボット支援下手術” が加わることになり, 手術術式の選択肢が増えることによって, 一層優れた手術を患者さんに提供することが可能な環境を整えております。当院では各診療科でのロボット手術を安全に実施するために, 精鋭メンバーで構成されたロボット手術チームを立ち上げており, 地域の皆さんに安心して最先端の治療を受けていただけるよう, 万全の態勢で臨んで参ります。ロボット手術に限らず, 御質問がございましたら, お気軽に外来を受診なさって下さい。
ダヴィンチは米国Intuitive Surgical社が開発した最先端の手術支援ロボットで、1~2cmの小さな創より内視鏡カメラとロボットアームを挿入し、高度な内視鏡手術を可能にします。術者は3Dモニター画面を見ながらあたかも術野に手を入れているようにロボットアームを操作して手術を行います。
当院に導入した「ダヴィンチXi」は第4世代にあたる最新鋭機です。患者さんの身体的な負担が少ない腹腔鏡下手術の特長を生かしつつ、ロボットの機能による支援によって、従来不可能とされていた手術操作を可能とします。
内視鏡や鉗子を挿入するため、5-12mmの傷で済みます
(術式によって異なります)。
ロボットによる精緻な操作により、開腹手術に比較して術中出血が少なくて済みます。前立腺全摘除術は比較的出血の多い手術でしたが、ロボット支援手術の導入により術中に輸血が行われた例はほとんどありません。
鉗子の正確で細密な動きによって体の機能を温存させる手術が期待できます。前立腺全摘除術では、開腹手術に比べて尿失禁や勃起機能の回復が早くなることが報告されています。腎部分切除術では、腫瘍を正確に早く切除できるため、腎機能に対するダメージが小さくなる可能性が報告されています。
傷口が小さいため、傷の痛みは少なく、術後の回復は早い傾向にあります。
創部の感染が少なく、腸閉塞などの合併症発生率も低い傾向にあります。
拡大視野で精密な切除が可能であるため、がんのより正確な切除が可能と言われています。
鉗子類には触覚がないため、術者には”慣れ”が必要となります。しかし、ダヴィンチの製造元であるIntuitive Surgical社の定めるトレーニングを終了し、認定資格を取得した医師が執刀いたしますので、ご安心ください。
前立腺全摘除術では25°頭を下げた姿勢で手術を行うため、この姿勢が難しい患者さん(脳動脈瘤や緑内障の患者さんの一部)はロボット支援手術を受けることができません。事前に眼科を受診していただいき確認し、医師が適切な判断をさせていただきます。
また、以前に腹部手術を受けたことのある患者さんも、ロボット手術を受けることができないことがあります。詳細は医師にご相談ください。
「ダヴィンチ」によるロボット支援手術は2012年4月に初めて前立腺がんに対する手術が保険適用され、2016年11月に腎がんに対する手術が保険適用とされました。2018年4月には縦隔腫瘍、肺がん、食道がん、心臓弁膜症、胃がん、直腸がん、膀胱がん、子宮体がん、子宮筋腫に対する手術が保険適用となり、ロボット支援手術の保険適用範囲が大幅に拡大されました。
当院では、胃がん、直腸がん、肺がん、縦隔腫瘍、前立腺がん、腎臓がんに対する手術に対応いたします。
※2020年10月より縦隔腫瘍、11月より直腸がん、12月より肺がん、2021年8月より前立腺がんが保険適用となりました。
大腸がんのなかでも肛門に近い直腸がんの手術は、直腸のまわりに排泄や性機能にかかわる自律神経が集まっているため、難しい手術と言われています。直腸がんに対するロボット支援手術では、狭い骨盤腔内でその機能を最大限に発揮します。
より確実な神経温存により、術後の排尿障害や性機能障害を減らすことが可能です。それにより術後の患者さんの体への負担が軽減されます。
日本人の死因でもっとも多いのががんによるものです。さらにがんの中で最も患者数が多いとされているのが肺がんです。肺がんは他のがんに比べても予後が悪い難治性がんとされています。肺がんに対するロボット支援手術は、胸腔鏡下手術のメリットをさらに向上させ、精細な3Dカメラと自在に動く多種多様な鉗子により、従来の手術に比べ大幅に切開範囲が狭くなり、傷の痛みもより少なく、胸腔鏡下手術よりも安全でさらに術後の回復が早いとされています。
縦隔とは左右の肺に挟まれた胸部のことで、心臓や食道、気管、大血管、神経など、多様な臓器が含まる場所です。縦隔腫瘍は心臓や食道、気管支などを除いた部分にできる腫瘍です。縦隔腫瘍に対するロボット支援手術は、胸腔鏡では届きにくい部位にも到達でき、操作性にも優れ、より正確な手術が可能です。従来行われていた開胸手術は大きな傷がつきますが、ロボット支援手術では小さな傷で済ませることが可能です。
前立腺がんに対するロボット支援手術は、3次元の拡大画像を見ながら、より可動性が向上した鉗子を用いて手術を行うため、がんを取り残すことなく摘出が可能です。前立腺がんの手術では、術後に尿失禁や性機能障害(勃起障害)が起こるリスクがありますが、ロボット支援手術ではこのリスクを低くでき、機能温存が期待できます。アメリカでは前立腺全摘出術の80%がロボット支援手術と言われ、日本においてもその多くがロボット支援手術にて行われています。
腎臓がんの手術には「腎摘除術(全摘手術)」と「腎部分切除術」があります。 腎部分切除術は、腫瘍とその周辺組織のみを切除し、正常な腎臓を温存する手術術式です。がんが小さく(一般には4cm未満)、腎臓の外側に突出して存在する腫瘍に対して、腎部分切除術は標準手術術式となっています。 腎部分切除術において従来の開腹手術では肋骨の下付近に比較的大きな切開創が必要で、脇腹の筋肉を切開しなければならず、傷が大きく、手術後の痛みが大きいことが問題点とされていました。ロボットを用いることで立体的な画像から腫瘍と臓器の正確な位置関係を捉えながら手術を行うことが可能です。また、小さい傷口で手術が行えるため、術後の痛みが少なく、患者さんの社会復帰も早めることが可能になりました。
2012年4月に前立腺がんに対する前立腺全摘除術、2016年11月に腎細胞がんに対する腎部分切除術を行う場合に、ダヴィンチによるロボット支援手術は保険適用となりました。また、2018年4月には縦隔腫瘍、肺がん、食道がん、心臓弁膜症、胃がん、直腸がん、膀胱がん、子宮体がん、子宮筋腫に対する手術も保険適用となりました。入院・手術に関わる費用は年齢や年収、健康保険制度によって異なりますのでお問い合わせください。
その他の疾患については、保険適用ではないため自由診療となります。自由診療の場合、全額自己負担となります。
047-309-4186(地域医療連携室)
047-345-1111(代表)