重要なお知らせ

高周波カテーテルアブレーション~不整脈の根治を目指す治療~

カテーテルアブレーションは、不整脈に対する治療として1982年に米国で初めて患者さんに行われ、1994年には日本で保険適応となりました。当院でこの治療を担当する上田希彦医師は、1997年よりカテーテルアブレーションに従事しており、その技術的進歩とともに歩んできた歴史があります。新松戸中央総合病院心臓血管センターでは、安全第一をモットーに奏効率(治療効果)が高いカテーテルアブレーション治療の提供を目指しています。

Q. どんな不整脈に対して行われるのでしょうか?

・発作性の頻拍 (突然脈が速くなる、心臓の鼓動が速くなる不整脈)
※脈が規則正しくても非常に速ければ不整脈と診断される場合があります。

発作時の心電図で発作性上室性頻拍、心室頻拍、発作性心房細動、あるいは非発作時(症状がないとき)の心電図でWPW症候群と診断されている方に対して行われる治療です。発作時の心電図が記録されていない場合でも診断のための検査(不整脈を誘発)を行って調べます。

・自然には正常な脈には戻らず持続する不整脈 

持続性心房細動、心房粗動に対して行われる場合もあります。これらの不整脈が止まらない状態にありながら症状が乏しい方もおられます。

Q. どんな方法で行われるのでしょうか?

カテーテルアブレーション(高周波を用いるもの)は以下の方法で行います。

 
  1. 麻酔を十分に行ったうえで、足の付け根の血管に針穴をあけてから、治療のカテーテル(直径2㎜程度の導線)を挿入し心臓内まで、安全を確認しながら到達させます。
    ※カテーテル先端は、術者の手元のハンドルで細かく動かすことができます。動きは、後ほど説明する3次元不整脈診断・治療システムやX線の透視上、リアルタイムで確認できます。
  2. 不整脈の原因となっていると思われる部位(心臓の筋肉の一部)に高周波という電気を流します。
  3. これにより50度程度の熱がカテーテル先端部(電極)が接触している心臓の筋肉に発生し凝固変性(筋肉が白っぽく変化)します。これを焼灼(アブレーション)といいます。
  4. 凝固変性が不整脈の原因となっている心臓の筋肉に生じると不整脈を発生させる異常な電気の発生や流れを絶つことができます。
カテーテルアブレーション1
使用するカテーテルは、
  • 高周波等のエネルギーを用いて焼灼するもの
  • 心臓内の心電図を記録、電気刺激するためのもの
  • 超音波を出して心臓を抽出するもの
のうち複数を使用するため、複数カ所から挿入します。
 
最近では、カテーテル先端についている圧力センサーが合併症を減らし、効果的なアブレーションを行うために重要な役割を果たしています。カテーテル先端からは生理食塩水が還流し、血栓の予防、安定した温度の維持を行っています。(主に心房細動で使用)
カテーテルアブレーション1

Q. 心房細動に対するカテーテルアブレーションとはどんな治療でしょうか

 
心房細動の発生と維持には、肺から戻ってくる血液が通る肺静脈と左心房の接続部が非常に大きな役割を果たしており、この部位(左右、上下4カ所の接続部)を囲うように綿密に焼灼を行います。カテーテルは静脈から挿入しますが、心臓では、まず右心房に入ります。特殊な針を用いて穴を開けて 左心房、肺静脈に到達させます。
穴をあける際は、超音波を出すカテーテルでリアルタイムに観察して、慎重に行います。 左心房、肺静脈にも複数のカテーテルを入れることがあります。
カテーテルアブレーション3

3次元不整脈診断・治療システム

カテーテルアブレーション施行時に、アブレーション(焼灼)用カテーテルの電極の位置を正確に計測し、三次元的再構成したイメージを術者のモニターに表示させるシステムです。このシステムは心臓内のカテーテルの電極を心臓の内壁に接触させ、心臓の立体構造、位置、心臓内の心電図の情報を短時間に高密度に収集します。これにより作成した詳細な三次元的再構成イメージ上に、不整脈の発生源、不整脈の電気興奮回路(不整脈の原因となる異常な電気の流れ)、焼灼部位、障害されている心臓の筋肉の範囲、電気の流れが遮断されている範囲(隔離範囲)等が精細に表示されます。呼吸により心臓、カテーテルの位置は変動しますが、この変動を補正する機能も併せもっています。
3次元マッピングシステムとも呼ばれ、不整脈の原因部位を正確に特定し、より安全に治療するために開発されたものです。カーナビやスマホに搭載されているGPSシステム(3つの衛星(時間情報も算出するため実際は4つ)の距離を同時に電波で計測)と同様の方法で位置情報を算出しています。この衛星にあたるものが、カテ―テル室の検査台の下、治療を受ける方の心臓を囲むような位置に留置したコイル(磁界を利用)、背中と胸に貼ったパッチ(微小電流を利用)です。 カテーテルアブレーション4 カテーテルアブレーション5

当院では、進歩的かつ確立された3次元不整脈診断・治療システムが導入、管理されています。 当院でカテーテルアブレーションを担当する医師は、複数の施設で3次元不整脈診断・治療システムの導入、運用を行った実績があり、長年の経験をもとにシステムの選定、運用を行っております。またこれらのシステムのメンテナンスについても当心臓血管センターでは細心の管理を行っております。

カテーテルアブレーション6

Q.高周波カテーテルアブレーションを行う施設に必要な基準はありますか?

特別な基準は設けられていません。とはいえ、合併症に対応するためには、常勤の心臓血管外科医や、血管、冠動脈を専門とする循環器内科医が重要で、安全な麻酔を行うためには、麻酔困難例もあり麻酔科医が勤務している必要があります。当院では、指導医を含む複数の心臓血管外科医や冠動脈を専門とする循環器内科医が心臓血管センターに所属し、麻酔科医師が常勤しています。また高齢の方が増えており心臓以外の病気を併せてもつ方も多く、外科、救急科、内科等が総合的に対応可能です。

Q.一般的にはカテーテルアブレーションの効果はどの程度でしょうか?

  • 発作性上室性頻拍、WPW症候群、心房粗動(通常型)
    成功率(再発しない割合)90~95%程度/再発率5-10%
  • 発作性心房細動
    成功率80%前後(3年間で再発しない割合、ただし3か月以内の再発除く)/再発率20%前後
  • 持続1年以内の心房細動
    成功率70%前後(3年間で再発しない割合、ただし3か月以内の再発除く)/再発率30%前後

カテーテルアブレーションの合併症について

カテーテルアブレーションは、メスは使わないものの一種の手術です。細心の注意のもとに行っても、以下のような合併症は皆無というわけではありません。患者さんの病状や不整脈の種類によって発生率は異なります。合併症として、カテーテルにより心臓のまわりに血液が溜まる心タンポナーデや、脈が非常に遅くなる房室ブロックなどがあり、修復手術やペースメーカーが必要な場合もあります。もちろんこれらの合併症が起こらないように細心の注意を払って手術を行いますが、合併症が起こってしまったとしても、迅速かつ適切な対応を行います。

  • 心臓血管、心臓弁や弁の支持組織(腱索)の損傷、穿孔:約0.1%
  • 心タンポナーデ(心臓の外に血液が漏れ血圧が低下する):約1%
  • 穿刺部仮性動脈瘤(血液の溜りが動脈と交通した瘤)/動静脈瘻(動脈と静脈が交通):約1%
  • 房室ブロック、洞機能不全の発生(心拍、脈拍の著しい低下):約0.5%
  • 塞栓症(脳梗塞を含む):約0.3%
  • 食道関連合併症(穿孔、瘻孔を含む):0.03%
  • 胃運動障害:0.2%
  • 横隔神経麻痺:0.1%
  • 肺静脈の重度狭窄/閉塞:0.3%
  • 空気塞栓(冠状動脈、脳、肺):0.3%
  • 気胸(肺がしぼむ)/血胸(肺の周りに血液がたまり肺がしぼむ):0.1%
  • 死亡:0.03%(心房細動の場合)
 

外来初診から入院、退院まで

外来日

火曜日・土曜日の午前(9:00~11:00)、水曜日・金曜日の午後(14:00~16:30)に担当医師の外来を設けております。紹介状がなくても対応可能です。診察でカテーテルアブレーションが必要かどうか診断いたします。必要であると診断した場合、十分な説明の上、同意を頂いた上で、必要な検査を行い、入院日、治療日を決定します。

入院期間

原則3泊4日としております。治療の施術にかかる時間は、個人差もありますが1時間から4時間程度です。治療後、足の付け根からカテーテルを抜去し(心臓や血管内に残すものはありません)病室に戻ります。治療を受けた日はベッド上で安静が必要です。カテーテルを入れる部位に小さな傷がつく程度(皮下出血で腫れる場合もあります)で、問題がなければ、治療の翌日からベッドを離れて歩くことができます。退院後4日間は、なるべく自宅などで穏やかに過ごして頂きますが、食事、入浴、歩行などは通常通りの生活ができます。

退院後

退院から2週間前後に一度外来を受診していただきます。仕事や学校を休むために必要があれば、診断書を作成いたします。

なお、地域の中核総合病院として、他院では治療が難しいとされた不整脈症例でも積極的に受け入れています。
「治療を迷っているので相談したい」、「アブレーションが必要と診断されたが本当だろうか」、など気がかりなことがありましたらぜひご相談ください。
以下のような方にも対応いたします。

  • 高齢の方
  • 基礎疾患のある方
  • 透析治療を受けている方
  • 携帯型心電計やアップルウォッチで不整脈を記録された方
  • 発作の心電図が記録できていない
  • アブレーションを受けたが再発した
  • アブレーションを勧められたが迷っている
  • 術前の経食道エコーが、うまく呑み込めるか自信がない
    ※当院のアブレーションでは経食道エコーは原則行わず高精度のCTで評価します
  • 首、肺に近い鎖骨付近の血管からカテーテルを入れるのが心配だ
    ※当院のアブレーションでは原則、首や鎖骨付近の血管にはカテーテルを挿入しません
  • 心臓血管外科がない施設でのアブレーションを検討しているが心配だ
  • 麻酔科医師のいない病院での全身麻酔下のアブレーションを検討しているが心配だ
  • アブレーション以外の治療も検討したい
  • 客観的な評価によりカテーテルアブレーションの予測再発率を知りたい
  • 経済的な心配がある

手術を受けた患者さん・ご家族様へのお知らせ

カテーテルアブレーション治療を受けた患者さん・ご家族様へのお知らせ

所属医師

循環器内科部長
上田 希彦 (うえだ まれひこ)

高周波カテーテルアブレーション~不整脈の根治を目指す治療~、循環器内科(心臓血管センター)

専門・得意分野 循環器内科一般
不整脈
カテーテルアブレーション
ペースメーカ・ICD・CRTD植え込み
資格・所属学会 日本内科学会総合内科専門医
日本循環器学会循環器専門医
日本不整脈心電学会不整脈専門医

循環器内科(心臓血管センター)